教員紹介

櫻井 博

教授(理学博士)

研究者総覧

専門分野

分子生物学、生物学

研究内容

1.プロテインホスファターゼの活性調節機構

細胞内での主要なシグナル伝達ツールであるタンパク質のリン酸化は、プロテインキナーゼとプロテインホスファターゼにより調節されています。主要なホスファターゼであるprotein phosphatase 2A (PP2A)は、細胞内セリン/スレオニンホスファターゼ活性の90%以上を担っており、幅広い基質特異性を持ちます。しかしながら、特に重要な機能を持つリン酸化タンパクの脱リン酸化に関しては、PP2Aとその標的タンパクの両者に結合し、PP2A活性を制御するアダプター/モジュレーター(活性調節タンパク) が存在すると考えられます。たとえば、アダプターとしてはたらくIERファミリータンパク(IER2, IER5, IER5L; immediate-early response)は、PP2AのB調節サブユニットとPP2Aの標的タンパクであるHSF1(heat shock factor 1)の両方に結合し、PP2AによるHSF1の脱リン酸化を促進します。脱リン酸化型HSF1は細胞増殖やストレス応答に関与するさまざまなタンパク質遺伝子の発現を誘導します。このようなPP2A活性の調節メカニズムとそれに伴う細胞応答について研究しています。

2.細胞増殖の制御におけるプロテインホスファターゼの役割

細胞には、増殖,休止状態,分化,がん化,死、という運命があります。増殖している細胞は、「G1→S→G2→M」という細胞周期を繰り返します。この細胞周期制御の破綻は細胞死またはがん化を引き起こします。細胞周期の進行を制御するエンジンはサイクリン(Cyclin)とCDK (cyclin-dependent kinase) です。G1→S期の移行は詳細に研究されており、活性型Cyclin/CDKはRb-E2F複合体のRb (retinoblastoma) タンパクをリン酸化します。E2Fはリン酸化型Rbから解離し、G1→S期の移行に必要なタンパク質遺伝子の発現を誘導します。したがって、RbはG1→S期の移行を阻害しており、Rbがなくなると細胞周期が進行します(世界で初めて同定されたがん抑制遺伝子)。Cyclin/CDKの活性はCDC25ホスファターゼやWEE1キナーゼにより調節されています。これまでに、細胞内でのCDC25の安定性や活性がPP2Aにより調節されていることを明らかにしてきました。また、Cyclin/CDKと拮抗してRbの脱リン酸化に関与するホスファターゼについても研究しています。

このような研究は、タンパク機能の調節、シグナル伝達経路、細胞増殖やがん化の理解において、とても重要です。

これまでの研究業績

研究室からのアピール

毎日新しい発見があります。一緒に研究してみませんか?