教員紹介

長屋聡美

助教(保健学博士)

研究者総覧

専門分野

血栓止血学、検査血液学

研究内容

1. 遺伝性血栓性素因・出血性素因の遺伝子解析および病態解析

当研究室(森下研究室)では、1999年より遺伝性血栓性素因や出血性素因が疑われた症例の遺伝子解析を行い、多くの遺伝子変異を同定してきました。さらに、培養細胞を用いて変異蛋白質を作製し、その変異蛋白質が生体内でどのような動態を示すのか、蛋白質としての活性が低下する機序を解析し、患者さんの生体内で生じている病態解明に取り組んでいます。

2. 抗凝固因子プロテインS活性測定に影響する要因の検討

日本人に多いとされるプロテインS(PS)欠乏症ですが、当研究室での解析では遺伝子変異同定率は約30%程度と低率に留まっています。このPS欠乏症を診断する上で重要となるのがPS活性値ですが、様々な要因で低下することが知られています。PSにはトロンビン感受性ドメイン(TSR)が存在しており、TSRは複数の酵素で切断されます。当研究室は、PS活性測定用検体の不適切な保存(全血室温保存など)によりTSRが切断され、PS活性が偽低値となることを報告しました。現在は、このようなPSのTSR切断が凝固亢進状態の患者様の生体内においても生じている可能性を考え、in vitroin vivoでのPS切断について研究しています。

これまでの研究業績

  • First report of inherited protein S deficiency caused by paternal PROS1 mosaicism. Nagaya S, Maruyama K, Watanabe A, Meguro-Horike M, Imai Y, Hiroshima Y, Horike SI, Kokame K, Morishita E. Haematologica. 2021;107(1):330-333.
  • Effect on Plasma Protein S Activity in Patients Receiving the FXa Inhibitors. Nagaya S, Terakami T, Hayashi K, Futusho H, Fujino N, Kato T, Asakura H, Morishita E. J Atheroscler Thromb. 2021. doi: 10.5551/jat.62951.
  • Evaluation of Optimal Sample Processing Conditions for Accurate Measurement of Protein S Activity. Nagaya S, Araiso Y, Yamaguchi K, Omote Y, Matsui A, Asakura H, Morishita E. Ann Clin Lab Sci. 2021;51(2):3-9.
  • Genetic analysis of a compound heterozygous patient with congenital factor X deficiency and regular replacement therapy with a prothrombin complex concentrate. Togashi T, Nagaya S, Nagasawa M, Meguro-Horike M, Nogami K, Imai Y, Kuzasa K, Sekiya A, Horike S, Asakura H, Morishita E. Int J Hematol. 2020;111(19):51-56.
  • Congenital coagulation factor X deficiency: Genetic analysis of five patients and functional characterization of mutant factor X proteins. Nagaya S, Akiyama M, Murakami M, Sekiya A, Asakura H, Morishita E. Haemophilia. 2018;24(5):774-785.

研究室からのアピール

私たちの研究室(森下研究室)では、血栓形成制御メカニズムを解明し、血栓症や血栓によってもたらされる病態を治療・予防することを目的とした研究を行っています。臨床現場(診療・検査)で抱いた疑問を研究によって解明し、その成果を治療法や検査法の開発といった臨床にフィードバックすることを目指しています。血液・凝固分野の研究やこれらの臨床検査に興味のある方は、ぜひ一緒に研究しましょう!